ごあいさつ

  
一般社団法人日本シミュレーション学会会長 藤原進


一般社団法人日本シミュレーション学会会長挨拶


 令和4年7月21日の総会にて本会会長を拝命しました藤原進です。副会長の剣持貴弘氏とともに2年間の任期で会長を務めさせていただきます。

 私の現在の専門は、「高分子結晶化などのソフトマターの構造形成」と「DNAに対する放射線の影響評価」に関する分子シミュレーション研究です。高分子のもつ特徴の一つとして、凝集構造の階層性を挙げることができます。このような階層構造の形成機構を解明するためには、各階層における計算だけでなく、異なる階層間の連携が重要となります。また、DNAが電離放射線障害の重要な標的分子であることが明らかになっていることから、電離放射線の生物学的影響を評価するためには、必然的に微視的現象から巨視的現象の理解が必要となり、様々な分野の研究者間の連携が重要となります。このことは分子シミュレーション研究に限った話ではなく、様々な階層・分野のシミュレーション研究に共通したことですので、シミュレーションをキーワードとして階層・分野にとらわれない研究交流を行う場として日本シミュレーション学会の必要性がますます高まってくると考えております。

 これまで日本シミュレーション学会において、中村浩章前会長の任期中(令和2年から2年間)には、私は企画委員長および英文論文誌特集号担当委員として、主にJSST年次大会の企画・運営に携わってまいりました。その際には、COVID-19への対応、特にJSST2020大会の中止があり、財務状況の悪化に加速をかけるという大きな問題が生じました。それを改善すべく、年会費の改定・JSST2021大会の充実を目指して取り組み、何とか改善の期待が持てるまでに至っております。このV字回復ともいうべき流れを、今期もさらに加速してまいりたいと考えております。つきましては、会員の皆様方におかれましても、どうぞご協力をお願い申し上げます。

 さて、具体的な活性化の方針として2点考えております。1つ目は、研究委員会活動の活性化、2つ目は、理事会各委員会活動の活性化です。1つ目の研究委員会活動については、5つの研究委員会が新年度の新たなスタートを切りました。この研究委員会の活動を活性化すべく企画委員会を通したサポートを考えております。2つ目の理事会各委員会の活動については、新たに会長就任に当たり、各委員会委員長と事前にご相談を行ってまいりました。これらの委員会を有機的に結び付け、さらには、JSST年次大会とも密にし、活動の活性化を図りたいと考えております。

 また、本学会が発行している英文論文誌Journal of Advanced Simulation in Science and Engineering(JASSE)につきましては、2年前にWeb of Science の Emerging Source Citation Index(ESCI)に登録されました。今後は、英文論文誌委員会(小山田耕二委員長)を中心に、Impact Factor が付与される Science Citation Index(SCI)への登録を目指してまいります。

 このように、シミュレーション研究者の研究成果発表の場の充実や研究者間の連携の促進を図るとともに、若手人材育成、会員サービスの向上、新領域の開拓、産学連携、健全な財務体制の構築などを行うことにより、本会のさらなる発展に微力ながら貢献してまいります。

2022年10月4日